高知工科大学大学院 起業家コース 起業ネットワーク

高知工科大学大学院 起業家コースのOB、在学生を中心とした組織です。

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起業家コースでの学びが子供たちへのバレーボールの指導に活かされる

   

皆さん、こんにちは。
平成28年春に起業家コース(現 企業マネジメントコース)を卒業した久保田智大と申します。今回、諸先輩方に続いてこちらのコラムを執筆させていただくことになりました。

拙い文章で見苦しい点が多々あるかと存じますが、ご容赦のほどよろしくお願いします。

さて、世間ではラグビーW杯での日本代表のベスト8進出という歴史的快挙に日本中が湧き、また来年には待ちに待った2020TOKYOオリンピックの開催と、スポーツ界の明るい話題が目白押しですね。

私自身は、2018年から小学生バレーボールの指導に関わるようになりました。自分の子供が小学校一年生から地元のバレーボールチームに入部して試合の応援やチームのお手伝いをするようになり、気が付けば指導者になっていた、といった感じですね。私自身は少年野球、中学ではサッカー、高校野球と少年時代はずっと何かしらのスポーツをしていましたが、バレーボールは未経験で、未だに子供たちへの指導も四苦八苦しています。
なぜ、未経験の私が指導者!?と話をもらった時には困惑しましたが、指名いただいた方いわく、「子供たちの試合を応援している様子が人一倍熱かった!」と熱意をかっていただけたようです。

熱意だけでは精神論しか教えられないんですがねぇ・・・
とはいえ、成長期の子供の指導に携わるのは非常に責任重大ですし、生半可な気持ちではダメだと、先日も指導者育成の講習会に参加したりと日々学びの毎日です。子供たちと一緒に練習しながら自分自身が上達することも一つの喜びになっていますが、やはり指導を通して子供たちがバレーボールを楽しんで、かつ技術的にも上達していく様子を間近で見られるのは、何ものにも代え難い喜びだと感じています。

写真.練習風景

スポーツ界の話題という点に話を戻しますが、冒頭でスポーツ界の明るい話題が目白押しと言いましたが、「スポーツの指導」という面からは、女子レスリング、日大アメフト部、日本ボクシング協会、日本体操協会などのパワハラ問題というネガティヴな話題も記憶に新しいところだと思います。

こうしたスポーツの指導に関する問題は、日本のスポーツの根底にある「精神論」が大きく影響しているのではないかと感じさせられます。自身の少年時代を振り返っても、特に少年野球をやっていたころは、ミスをしたら監督、コーチに臀部を差し出して「ケツバット」という名の愛のムチを受けていました。お尻をバットで殴って野球がうまくなるわけはないので、「痛い思いをしないように次からは気を付けよう」とか「チームメートの前で恥ずかしい思いをしたくないから、もっとうまくなろう」といったことを感じさせ、精神面の強化をすることが目的の行為だったと思いますが、今思い返すと殴られたときにそんなこと考えたこともなく、ただ「痛い」「恥ずかしい」という感情が残るだけでした。

そりゃ、そうですよね。「ケツバット」が精神強化に繋がる素晴らしい行為なら、年末の某TV特番で「罰ゲーム」として扱われるわけがないですから。
ただ、そうした意味のない暴力や過剰な叱責なんて言うのは、他のチームをみても自分たちの時代には当たり前に行われていましたし、自分自身もそれがおかしいことだとは感じていませんでした。

しかし、このような指導方法は既に社会的にも許されることではなくなっています。
実際に指導者の講習でも暴言の例として「やる気がないなら帰れ!!」という発言でさえ、パワハラにあたると言われておりました。

一方で、昔からスポーツ界で使われる「心・技・体」という言葉が表すように、スポーツプレーヤーにとって精神面の強化は良いパフォーマンスを発揮するために必要不可欠なものだということも事実です。
特に、少年スポーツでは「技」「体」以上に「心」の育成を目的として活動しているチームも多くあるのではないでしょうか。
では、スポーツを通じた「心」の育成とはどうのように行うべきか。
この課題に対して最近一つの仮説をたてて、指導の指針に取り入れつつあります。
それは、私が起業家コース時代に研究をした「組織能力」の考えを取り入れたものです

少年スポーツと組織能力を結びつけるのは野暮な気もしますが、この考えを取り入れて指導にあたるようになってその効果が少なからず発揮されているように感じています。
そして、その効果は特に子供たちの精神面に影響を及ぼしているように思われます。

例えば、練習の際の「声出し」について、これまでは「チームのために大きな声を出せ」と、声が出ていない子供に直接指導をしていました。この方法だと指摘された直後は一瞬だけ声が大きくなるのですが、少し目を離すとまた声が出なくなっているのです。
そこでやり方を変えて、日頃から練習の時に声が出ている子に「声が出てるね!良いね!その調子!!」と大きな声で褒めると、その子はさらに大きな声が出るようになります。この時には自分自身もできる限りの大きな声を出して褒めてやると、体育館全体に数名の声が響きわたるようになります。すると、今まで声が出ていなかった子供が何も言わなくても声を出すようになるのです。

そして、練習自体に活気が出て、子供たちの動きにもいい影響が見られるようになります。練習中の子供たちの顔にも以前よりも笑顔が増えたように思います。
これはまさしく、「チームの力=個人能力の総和」ではなく、「チームの力=チームメンバーの相互作用(組織学習)によって向上する個人能力の総和」という組織能力の概念がはたらいているものと確信しています。

まさか、起業家コースでの学びが子供たちへのバレーボールの指導に活かされるとは思ってもみませんでしたが、やはり社会人と学生の二足のわらじで苦労をしながら得た学びというのは、自分自身の人間的な成長にも繋がっているのだと改めて実感させられています。

色々な面で未熟なところもたくさんありますが、学び続けることの重要さを噛みしめ、本コラムの締めとさせていただきます。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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